最近ようやく馴染んできたギターのフレットを押さえた指に力を入れて、右手で弦をかき鳴らす。周囲の空気を震わせた最後の一音の余韻が消え去ってしまうと、僕の周囲からはぱらぱらと拍手が起こった。
 今目が覚めたような気分で息を吐いて、自分がいる場所を確認するようにあたりを見回す。駅前の広場の街灯の下。無機質に通り過ぎていく人たちの横顔。車の走る音と、時折聞こえるクラクション。
 僕は、足を止めて演奏を聴いてくれていた人たちに軽く頭を下げると、ストラップから肩を抜いて、ギターを下ろした。
「もう、終わりですか? もっと聴きたかったのに」
 最後までその場に残っていた誰かがそんな風に言って、僕はギターケースの隣に置いてあったラジカセのアンテナを立てながら、その声の主を見た。
「もう終わっちゃうんですか、せんせ?」
 座っている僕を覗き込むようにして、女の子がいた。にこにこと笑顔で、もう一度問いかけてきている。
「それ、やめてって言ったよね?」
 僕は眼鏡のブリッジを触りながら言った。さて最後に会ったのはいつだったっけ、と考える。
「だって、せんせはせんせだもん」
 言いながら、彼女は帽子のつばに手をやって、少し目深にかぶり直すようにした後、僕の隣に座った。
「ひさしぶり、ですね」
「そうだね」
「せんせは、お変わりなく?」
「お、そんな言い方もできるようになったんだ」
「からかわないでくださいよー」
「ごめん」
「で、お変わりなく?」
「おかげさまで。そっちも元気そうでなにより」
「えへ。いろいろ忙しくって」
「知ってる」
「そうなんですか?」
 僕がそれに答えようとしたところで、ラジオから声が聞こえてきた。元気なアイドルの持っているレギュラー番組。


『こんばんはーっ! みなさん元気ですか? あたしはいつでも元気……ってわざわざ言わなくても最初の一声でわかるってこないだ放送作家さんに言われちゃいました。
 えへ。
 今日もあたし、日高愛が、これを聞いてるみんなに元気を届けられるようにがんばります!
 それでは、三十分お付き合いくださいね。最初のナンバーは、この間出たあたしの新曲、『Hello!』です。前向き元気なポップ・ナンバー、聞いてください!』

 音の割れたラジカセから、歌が流れ始める。そこまで聞いてから、僕は彼女を見た。彼女は少し照れくさそうに笑って、「生じゃなくて収録なんです」と言った。







『マジックナンバー』







 どうですか? と彼女は何かを期待するような表情で僕に問いかけてくる。僕はラジオから流れるその曲を最後まで聴いてから、「なかなかいい曲だね」と言った。
「なかなかですか」
「すごく」
「とってつけたような感じです」
「とっても」
「わざとらしいです」
 そんな積もりがなかったとは言わないけれど、いい曲だと思ったのは本当だった。とても彼女に似合っている。それを伝えると、彼女はにっこりと笑って、
「そう言ってほしかったんです」
 と言った。僕は苦笑して、ラジオに耳を傾ける。


 //


 僕が彼女と――日高愛と出会ったのは、今こうやって座っている駅前の広場で、そして、僕たちにはここが全てだった。最後に会ったのもここだったし、この場所以外で僕は彼女に会ったことはなかった。
 僕が歌い始めたのは、大学に入って二年目のことだった。それ以前から音楽に引っ掛けた気持ちはあったけれど、実際に行動に出たのは、上京して大学に入ってからだ。
 いくつものライブハウスを巡って、いくつかのバンドに参加してライブをやったりして、路上でライブをしているバンドを見て、そうしてあっという間に時間が過ぎていって、僕に残ったのは、自分へのたくさんの失望と、それから、いくつかの羨望だった。
 僕には、音楽で掴めるものなんてない。その認識は、じわじわと、真綿で首を絞めるように僕の呼吸を苦しくしていった。認めなければいけない。そんなことは分かっていた。でも、それを認められないまま、僕は三ヶ月分のバイト代を注ぎ込んだギブソンを抱えて、そのどうしようもない気持ちを投げ出すように、ストリート・ミュージシャンとそれを見に来る人で賑わうこの場所で歌うことにした。僕はもう、大学に入って三回目の冬を迎えようとしていた。
 古い曲。
 新しい曲。
 それから、熟した果実が枝からぽろりと落ちるように、僕の中から生まれた曲。
 決して、それが耳にした人全てに届くなんて、自惚れていたわけじゃなかった。だけど、誰一人聞いてくれる人がいないとも、思わなかった。


 //


 ぱちぱち、と離れたところで拍手が聞こえて来て、僕は意識を現実に戻した。駅前の広場の、植え込みのコンクリートの囲い。僕たちが座っている場所とは反対側で、二人組の男がギターをかき鳴らして歌っている。彼らはちょくちょくここで歌っている二人組で、彼らが歌い始めると、薄い人だかりができはじめていた。けれど、そんな彼らの音は、僕にはただがなり立てているだけのノイズに聞こえた。そう口にしたところで僕のひがみにしか聞こえないのだろうけれど。
「せんせのギターの方がかっこいいですよ」
 不意に彼女がそんなことを口にして、僕は内心の動揺を悟られないように「どうも」とだけ返した。彼女はにっこりと笑って僕の言葉を受け止めてしまったから、ささやかな見栄なんてあっさりと見抜かれてしまっているんだな、と僕は思った。
 女の子はあっという間に大人になる。若木の枝が伸びていくように。


 //


 それでもやっぱり、僕の曲を聴いてくれる人なんて、ほとんどいなかった。たくさんの人が僕の前を通り過ぎていって、だけど、その事実が余計に僕をギターとストリートにのめり込ませていった。自分でも気付いていなかったけれど、僕は自分で思っているよりもずっと天の邪鬼な人間のようだった。
 毎日毎日ギターの練習をして、いつもの駅前に通う。時々酔っぱらいにからまれたりとかはしたけれど、後になって思うと、とても幸せな時間だったことを僕は知る。だって、歌とギターと曲のことだけを考えていられる日々だったからだ。
 それでも、ふとしたときに、悪魔の、ひょっとしたら天使のかもしれないささやきが僕の耳に聞こえることがあった。
 こんなことしてて、いいの?
 僕の大学生活はもう四年目に入っていて、僕の周囲には就職と内定の話が聞こえてくるようになってきていた。僕も周囲の流れにそのまま流されるように就職に向けた講義を受け、いくつもの面接を受け、そして全ての企業から不採用の通知をもらっていた。
 こんなことしてて、いいの?
 最初は時折ささやくだけだったその言葉は、次第に僕の耳に突き刺さるように鋭くなり、棘を生やし、肉に食い込み、離れなくなっていった。その声から逃げるようにして、僕はますますギターの音量を上げて、ストリートに立った。

 そして、僕は『彼女』と出会った。
 天海春香。
 アイドル『だった』、女の子。



 //



 はい、新曲、『Hallo!』でした。どう? どうでしたか? 聞いてくれた人がどんな風に思ってくれたのか、ドキドキしてます!
 自信はあります。自信はありますけど、それだけでなんでも乗り切れるものじゃないですよね。ううん、やっぱりそういうことじゃなくて、自信があるからこそどんな風に思われたのか気になるというか……
 あ、この曲では初めて自分で歌詞を書いてみたんです。先輩、私の尊敬してる先輩が、自分で歌詞を書いてみるのも勉強だよ、って言ってくれて、それで、試しに書いてみて、で、いろんな人の意見聞きながら、今の形になりました。
 買って、聞いてくれると嬉しいです。
 っと、それではここで今日のリクエストナンバー、『わた大熊猫』さんからのお便りで……あっと、これ、渋いですね。渋いですね。大事なことなので二回言いました!
 あんまり洋楽とか詳しくないんですけど、あたし、この曲は知ってます!
 実はこの曲にはちょっと思い出が――って、先に曲ですね、わっかりました!

 それじゃあ、曲は、『好きにならずにいられない』です!


 //


 ラジオから聞こえてくる曲に、彼女が軽くハミングを重ねる。僕の手は反射的にコードを押さえようとして、だけど、ギターは傍らに置いたままだったことをすぐに思い出した。
 とっさに彼女にあわせられなかったことを、少し残念に思う。
「この曲」彼女はハミングをやめて、僕の方を見て言った。「せんせのオリジナルだってずっと思ってたんですよ」
 僕は苦笑して肩を竦める。
「本物の方が断然上手いですよね、やっぱり!」
 にこにこしながら言う彼女に、僕はやっぱり苦笑。
「でも、」
 にこにこ顔を、彼女は少し大人びた笑顔に変えた。一瞬のうちに、子供と大人の顔が切り替わる。この年代だけが持っているアンバランスな調和。それを目の当たりにしている僕。
「なんででしょうね。せんせのギターみたいには、あたしの中に入ってこなかったです」


 //


 しばらく僕は、駅前で歌うことをやめた。何かが変わったのか、それとも何も変わらなかったのか、それとも何かを変えようとしたのかは自分でもよくわからない。だけど、あの日、『彼女』と出会って、一緒に歌ったことで、僕の中の何かが変質してしまっていた。
 次の日から、僕は履歴書を持ち歩いて、いくつもエントリシートを書いて、毎日のようにスーツを着て企業を回った。もう手遅れだよ、と名前も知らない大学の学生課の職員の目が僕に語りかけてきたけれど、僕はそれを無視した。冬は寒さを増していて、風は切り裂くように冷たかった。でも僕はそうしなければいけないんだって思った。音楽に逃げ込むんじゃない、って、そんな風に、あの日の彼女の歌が僕の中で何度も木霊した。
 そうやって過ごしているうちに、冬の寒さはピークを越えて、風が少し柔らかくなった頃に、僕は一つの内定をもらった。卒業さえ問題ないなら、すぐにでも来て研修を始めろということだった。
 是も非もなかった。やるしかないのだ。そして、小さな会社だったけれど、僕はそれが決して嫌ではなかった。こじんまりしているほうがきっと、僕の性には合っている。
 春になって、大学を卒業して、実際に仕事を始めれば、きっと、自由に使える時間も減るのだろう。そんなことを考えたときに、部屋の壁に立てかけてあったギターが目に入った。もう二ヶ月以上この部屋から外出していないギブソン。
 歌わせろよ、と彼が言っているような気がして、そうだね、と僕は返した。
 残っているわずかな自由時間を君にあげよう、と僕は言った。

 それからまた、僕は駅前に立つようになった。よっぽどのことがない限り毎日僕は駅前に立って、相棒と一緒に音を紡ぎ続けた。それでもやっぱり僕の演奏と歌に足を止めてくれる人なんてほとんどいなくて、でも、それでもいいんだ、と僕は思うようになっていた。
 一度だけ。
 たった一度だけのこの場所でのセッションが、僕の耳から離れてくれなかった。もう一度彼女に会えたら、なんて考えることもあった。なんて言葉をかけようか。どんなことを伝えようか。
 君のおかげで――
 まるで愛の告白でもしたいみたいじゃないか、と苦笑しながら最後のフレーズを鳴らし終える。はあ、と吐いた息が白く宙に浮かんで、すぐに消えていった。かじかむ指先を暖めるように息を吐く。
 ちょっと冷えすぎるし、今日は早いけれど店じまいにしてしまおうか。そう考えていた僕に、声がかかった。
「もう、終わりですか? もっと聞きたかったのに」
 僕はゆっくりと、声の主を見た。そこにいたのは、中学校の制服を着た、ショートカットの女の子だった。
「今の曲、オリジナルですか?」
「あ、うん……」
 言って、僕も彼女も黙り込んでしまった。けれど、その大きな目は「もう一回」と僕に強く訴えかけてきていた。わかったよ、と僕は頷いて、ギターの位置を直して、弦を弾いた。そうやって引き始めると、彼女は崖下から奈落を覗き込むような真剣さで、僕の一挙手一投足を見つめていた。僕はこの一曲が終わる頃には、彼女の視線に射られて穴だらけになってしまうんじゃないかとさえ思った。
 だけど、そんな心配はすぐに消えた。僕が歌い始めると、彼女はそっと目を閉じた。僕はただ彼女の姿だけを見ながら歌った。初めて、僕にアンコールを要求してくれた相手だ。それがどう見ても中学生くらいの女の子だということは気にならなかった。ただ、自分の音が届いたんだという実感が嬉しかった。
 目を閉じたまま、彼女は時折体を揺らしながら、僕の歌を聞いてくれていた。三回目のサビで、彼女はすぅ、と息を吸った。
 そして、



 //



 んー、何回聴いてもいい曲ですね!
 そもそも私がこの曲を知ったのは――って、さっき話しましたっけ? え? まだ話してない?
 えへへ、曲が流れてる間にいろいろ考えちゃって、ちょっと胸がいっぱいです。アイドルになる前の、歌を歌い始める前の、何も持ってなかったあたしのこと、思い出しちゃいました!
 えーっと、ここでお便り読ませてもらいますね。ラジオネーム、えっと、ないですね。本名――はまずいと思うのでこのままいきましょう。名無しさんからのお便りです。

『愛さん、こんばんは』
 はい、こんばんわー。えへ、さん、って言われるとなんか照れますね。あたし、たいてい呼び捨てかちゃん付けで呼ばれるので。
 えっと、
『この前、初めてラジオ聞かせてもらいました。普段はラジオなんて聴かないんですけど、愛さんがラジオやってるってネットの書き込みで知って、聴いてみたんです』
 あら、そうだったんですか。ありがとうございます!
『……私、愛さんのことが、嫌いでした』
 え?
『なんかうるさくって、いつも元気だっていうのがなんかいらっとして、でもそのくせ、ほんとうに楽しそうに歌を歌ってて――あ、ごめんなさい、今は嫌いじゃないんです。本当です。
 ええと、質問、したいんです』

 ……はあ、しつもん、ですか。



 //



「困ってる困ってる」
「とっても困りました」
「構成作家さんと喧嘩した?」
「むーん、そんなことない、つもりですけど」
「自分ではそう思っていても、相手がどう思うかまではわからない、だね」
「あ、それ、なんか懐かしいですね」
「そう?」
「そうです」
 彼女は笑う。子供の表情の方だった。



 //



 初めて彼女の歌を聴いたときのことを、今でもまだ鮮明に思い出せる。その姿と、その声は、僕に一つのデジャヴを起こした。いつか見た風景。記憶の中にある風景。彼女はその歌で、そっと僕の中のドアを叩いて、その中にあるものを引っ張り出した。
 正確に言えば、歌というほどのものではなかったと思う。何度か繰り返されるサビの何回目かに合わせて、彼女はそれを軽く口ずさんだだけだ。なのに、僕のほうはといえば、その不意打ちに動揺しきってしまって、残った短い一曲の最後が来るまでにコードを三回間違えて、歌詞を二回飛ばした。
 彼女が歌い始めた後、今まではただ通り過ぎるだけだった人たちが、ふと足を止め、何かを探すように辺りを見回して、歌っている彼女を見つけて、そのまま足を止める、そんなことが起き始めた。
 決して洗練されていない彼女の歌。だからこそ、彼女のむき出しの声は、僕の胸に刺さった。きっと、足を止めた人たちもそうだったのだろう。少しずつ硬さがほぐれて、もともと豊かだった声量はさらに大きくなった。演奏している僕を引っ張っていくような、歌だった。そんな彼女の歌を終わらせるのが惜しくて、僕はラストのサビの繰り返しを二回も余計にやってしまった。
 歌が終わる。空気の波を振るわせた最後の一音が余韻を残して消え去っていった後、その場に起こったのは信じられないくらい大きな拍手だった。夢から覚めたみたいな気持ちで僕は、僕を夢とよく似た世界に引きずり込んだ歌を歌った女の子を見た。
 彼女は呆然としているような顔で自分の胸に手を当てて、何回か浅い呼吸を繰り返した後、一歩足を前に出そうとして、そのままかくんと膝を折った。ぺたりと地面に座り込んでしまった彼女に駆け寄って、支えて立ち上がらせると、僕はその場で足を止めてくれていた人たちに「すいません、今日はこれで終わりです」と言って、彼女をさっきまで僕が座っていた場所に座らせた。ちょっと迷ってから、その場を離れて、暖かいカフェオレを自動販売機で買って戻ってくると、彼女は僕が離れたときと同じ姿勢でその場に座ったままだった。
「はい」
 と彼女の視界に入るようにカフェオレの缶を揺らすと、彼女は僕の手にした缶を見て、そして、初めて僕がいたことに気がついたみたいに僕を見た。
「だいじょうぶ?」
「あ、は、はいっ」
 彼女は頷いて、曲げていた体を起こして、僕を見た。まっすぐで、清冽な視線だった。僕はさっきの間違えまくった演奏について責められるかな、と身構えたけれど、彼女はそんなことはどうでもいいとでも言うように、にっこりと笑った。それは、胸を打たれるような笑顔だった。本当に無防備で、僕が触ったら汚れてしまうんじゃないだろうか、と思ってしまう、そんな笑顔だった。
「いい曲ですね」
「うん」
「あの、」
「うん」
「歌詞、教えて、もらえますか?」
 え、と僕は首をかしげた。カシ、という音が、歌詞という感じに変換されてくれなかった。一拍遅れて変換機能が作動して、僕は慌ててカバンをひっくり返して、大学ノートを一枚破ると、そこに歌詞を書き込んで、彼女に渡した。改めてじっと見られるのは少し恥ずかしい気持ちもあったけれど、彼女がそれを望んでくれたということが、僕には嬉しかった。
 彼女はその紙を眺めてた後、丁寧に折りたたんでスカートのポケットにしまうと、「ごめんなさい、もう行かなきゃ」と言って立ち上がった。
「ありがとう」と僕が走り始めた背中に声をかけると、一度だけ彼女は振り返って僕を見て、それからまた一直線に走っていった。



 //



『私、自分でも真面目な方だって思います。クラスでは総務、えっと、級長? やってるし、校則は破ったことなんてないし、部活動だってがんばってます。テニス部で、たぶん、次のキャプテンになるんだと思います。友達関係も、たぶん、悪くないです。結構友達多いし、学校生活うまくやれてると思います。
 だけど、ある日突然、上手く呼吸ができなくなっちゃったんです。
 朝起きて、学校に行って、授業を受けて、部活をして、帰ってきてご飯を食べて、宿題したりネットしたり電話したりメールしたりして一日が終わっちゃう。そういうのがずっ続いていくんだってふと考えたら、急に喉が絞まったみたいに息をするのが難しくなっちゃったんです。
 何かが足りないんです。
 でも、それが何なのかわからない。わからなくて、苦しいんです。わからないけど、でも、このまま放っておいたらもっと苦しくなるような気がして……』

 ……むー。


 //


「よくこういうのラジオでとりあげたよね」
「あたしもそう思っちゃいます」
「って君の番組じゃないか」
「構成作家さんの陰謀です」
「ああ、素っぽい答えが欲しかったのかもね。こういうの冒険だと思うけど」
「ですよねぇ」
「暴れたかったでしょ」
「実は」彼女はいたずらっぽく笑う。「ちょっとだけ」
 

 //


 気がつくと、僕が駅前に立っているときに、彼女はよく姿を見せるようになった。最初は僕と向かい合っていた彼女は、数日経った頃には僕の隣に座っているようになった。彼女はいつも学校の制服で、僕はそんな彼女のために駅前に立つ時間を早めた。そして、切り上げて帰る時間も早くした。
「遅くなっても、いいのに」
「僕が嫌」
「ぶー」
「家が、嫌い?」
「ううん、嫌いじゃ、ないです」言葉とは裏腹に、彼女はぐっと唇を噛んだ。「でも、ママと顔を合わせるのが、辛いんです」
 辛い。その言葉の意味を僕は考える。そうやって僕が考え込んでいる間に、彼女はぽつりぽつりと、いろんなことを語り始めた。一日の短い時間の中で語りきれないことも、僕たちは何日かかけて話した。そうやって刻むテンポは、彼女には自分の考えをまとめる時間になって、ちょうど良かったみたいだった。
『好きにならずにいられない』あの日歌った彼女の声がどうしても耳から離れなくて、僕はもう一度歌ってみないかと彼女に提案してみた。彼女は僕のその提案に、少し考えた後、「いえ、もう、十分です」と言った。何が十分なのか、そのまま視線を前に向けた彼女の横顔から読みとることはできなかった。あるいは、彼女の話してくれた家庭環境というものが関係しているのかもしれない。彼女の母親が僕のような人間でも知っているほどのとても有名なアイドルで、物心ついたときから彼女の名前には枕詞のように母親のネームバリューがくっついていたことが関係しているのかもしれない。
 えへへ、と彼女は笑った。「諦めること、覚えちゃいました」
「諦める?」聞き返す僕に、彼女は何かが抜け落ちたような顔で笑う。
「だって、なにやったってかなわないもん。生まれたときからずっとそうで、あたしのものなんて、何にもないんです」
「そっか」
「そうなんです」
 僕はギターを抱える。そんなの誰だってそうだ、とは言わなかった。僕のための場所なんてどこにもないし、僕のためのものだって何も約束されてはいない。どれだけ欲しがっても手に入らないものだってあるし、僕がそうやって欲しがっているものをまるで価値がないもののように道端に捨てていく人だっている。
 でも、僕がそれを知ったのは、本当に最近のことだ。中学生だったころはどうだっただろうかと考えてみたけど、思い出せるのは恥ずかしいほどになんでもできると思っていた自分のことだった。回る世界の中心には、きっと僕の座る椅子がある。そんなことを馬鹿みたいに信じていた。きっと、誰かに否定されたって反発しただろう。
 僕はギターを触る手を止めて、カバンの中に手を入れた。硬い感触。それを掴んで、引っ張り出す。
 CD。
 久しぶりに買った邦楽のCDだ。僕はそのジャケットの表面に触れて、問いかける。
 なあ、君はどうだったんだ?
 君は何を思って、この場所で歌っていたんだろう?
「それ、なんですか?」
「ん、CD」
「へー」
「貸そうか?」
「いいんですか?」
「僕はもう聞きまくったから」
 そう言って、僕はCDを彼女に渡した。別に何かが変わるとかそんなことは思ってはいなかった。ただ、彼女が興味を持ったから貸した、それだけだった。
 そのCDを鞄にしまって、彼女は僕の手の中からギターを持っていくと、両手でしっかり抱えて、左手の指でコードを押さえた。
「こうでしたっけ?」
「ん、あってる」
「次が、こう」
「そうそう。覚えるの早いね」
「せんせの教え方がいいんです」
「それはやめて欲しいな」
 僕が嫌そうな顔をすると、彼女はそれに反比例するように、楽しそうに笑った。そうやって彼女が本当に楽しそうに笑うから、僕は、タイムリミットがもう目の前まで来ていることを、彼女に言い出せなかった。



 //



『うまく、笑えなくなっちゃったんです。

 愛さんは、いつも笑顔ですよね。テレビで見る愛さんはいつも楽しそうで、何にも偽ったりしてなそうで、だから私、きっと嫉妬してたんだと思います。すごく素直に笑ってる愛さんが、羨ましいって思ったんです。
 だから、教えてください。
 どうやったら、普通に笑えますか?
 私には何が足りないんですか?
 どうして私は、周りの人と同じように生きていくことができないんですか?』

 ……むーん、むーん。
 む。
 むー!


 //


「あ、キレる」
「キレませんよー!」
「そうなんだ。えらいえらい」
「ば、ばかにされてるー!」
 そんなことないよ、と僕は言ったけれど、全然信じてもらえなかったみたいで、彼女はそっぽを向いてしまった。子供っぽさにプラス一ポイント。ラジオからはそんな彼女の唸り声が聞こえてくる。
「足りないものなんて」
「せんせ?」
「誰かに言われてわかることじゃ、ないのにね」
 そうですよね、と彼女は言った。
「でも」彼女は呟くように言う。「誰かに言われて進めることだって、ありますよ」


 //


 最後の休日だった。僕は彼女が来たらいいな、と少し期待しながら、駅前のいつもの場所に座ってギターケースを開けた。弦の張りを確かめて、そっと右手で弦を震わせる。今日で最後になるだろう、と僕は思っていた。僕はここから少し離れた場所にもう引越しをしてしまっていたし、新入社員として仕事をするようになれば、こうやってストリート・ミュージシャンまがいのことをする時間だってほとんどとれなくなるだろうと思ったからだ。少なくとも、ギターに触れる時間はかなり少なくなってしまうだろう。
 何曲か演奏をした後で、彼女はきょろきょろとあたりを確認するような仕草をしながら、やってきた。やあ、と軽く手を上げると、彼女はこんにちは、と軽く頭を下げた。いつもだったらそのまま彼女は僕の隣に腰を下ろすのだけれど、今日は違った。頭を下げたまま、座っている僕の目の前に立っていた。彼女は何かを言いたそうにしているんだ、と僕は思った。もう一度、と僕の演奏を促した彼女の視線を思い出した。
「今日で、最後になると思う」
 ぴくり。彼女の肩が揺れた。
「少し、遠くに行くんだ。そう遠いわけじゃない。でも、こうやっていれる時間はたぶん、ほとんど取れなくなる」
 もう一度、彼女の肩が揺れた。
「せんせがいなくなったら」彼女は小さな声で言った。そんな声、まるで彼女のものじゃないみたいだった。「居場所、なくなっちゃう」
「なくならないよ」
「でも」彼女は顔を上げた。透明な表情だった。何もないって思っている、彼女の顔。「しかたないですよね。せんせも大人だし、自分の都合もあるし」
「歌ってくれないか」
 僕が会話の流れをぶった切ってそういうと、彼女はきょとんとした顔をした。その顔は僕がちゃんと知っている彼女の顔だった。断られても食い下がろう。今日だけは、どうしても彼女に歌って欲しかった。僕がそう心に決めて彼女を見ていると、あっさりと首が縦に振られて、話を持ちかけた僕が拍子抜けしてしまった。
「いいの?」
「はい」
 彼女は胸に手を当てて、深呼吸をした。
「あたし、歌ってみたい、です」
 そうして、彼女は僕の隣に立った。僕と同じ方向を見て、すう、と息を吸う。そうして、最初の音が彼女を中心にしてあたりの空気を振動させて波のように広がっていた瞬間、僕たちの目の前を歩いていた人たちの足が一瞬止まった。きょろきょろと音の出所を探して、それから、何かに気づいたような表情で僕たちを見た。そんな人たちの何人かは僕たちの前で足を完全に止めてしまって、彼女の歌に聞き入っていた。
 一曲が終わって、僕が今までここでやってきて聞いたこともないような拍手が起こった。僕は彼女に次の曲名を告げて、「わかる?」と尋ねると、「せんせがここで弾いてた曲ならだいたいはわかります」と彼女は言った。
 言ってくれるじゃないか、と思いながら、僕は次の曲を演奏し始めた。彼女の言葉はハッタリなどではなく、ちゃんとメロディーも歌詞も頭の中に入っているようだった。時折間違えることもあるけれど、そんなことは問題にもならなかった。彼女の歌には、彼女の歌う姿には、何か特別なものがあった。それは、僕の心臓の鼓動を早める何かだった。見ている人、聴いている人に訴えかける何かだった。彼女の歌にへたくそなコーラスを重ねながら、僕はひょっとしたら彼女に恋をしてしまったんじゃないか、と思って苦笑した。
 途中で昼食休憩を挟んだ、長いライブだった。ほぼ一日彼女は歌いっぱなしで、僕は腕が吊りそうな気がしていた。でも僕たちは、お互いに、ここまでにしようか、と言い出せずにいた。終わらせる言葉を言い出せずにいた。
 でも。
 それは、僕が言わなければいけない言葉なのだろう。
 日が落ち始めて、あたりは赤い色に染まっていた。僕も、彼女も、赤いフィルターを被せられたみたいな色になっていた。地面も、ギターだってそうだった。最後の一曲、と思って僕はギターを歌わせた。彼女の声はちっとも衰えていなくて、掠れたりすることもなかった。その事実だけでも彼女はやっぱりスペシャルなんだろうな、と思った。
 曲が終わる。
「次は何にしますか!」と言いながら、彼女は本当に無邪気な笑顔で振り向いて僕を見た。僕はそんな彼女の顔を見ていた。今この瞬間の、歌だけを考えている彼女の顔が、泣きそうに歪んで、それからすっと舞台を切り替えるようにしていつもの顔に戻る瞬間を、僕はじっと見ていた。彼女の視線は、僕と、それから、僕が横に置いたギターの間をゆっくりと往復した。
 僕は立ち上がって、足を止めて聴いてくれていた人たちに頭を下げた。ありがとうございました、と言葉にすると、何故か鼻の辺りがつんとした。僕たちに降り注いだ拍手の数はとても多くて、何人もの人が去り際に「すごくよかった」とか「また聴きに来るよ」とか「メジャーデビュー楽しみにしてるよ」とか声をかけてくれて、その言葉は僕が受け取るべきものじゃないとわかっていたけれど、僕はそのたびにありがとうございますと頭を下げた。


 //


「CD、聴いたんです」
「うん」
 ぱちん、とギターケースを閉じて、僕は頷いた。
「なにかしなきゃ、って、歌いたいって、こんな風に歌えたら、って思ったんです」
「実はね」僕は言った。「あのCDのアーティストと、会ったことがあるんだ」
 彼女は顔を上げて、僕を見る。
「どのくらい前だったかな。彼女もね、ここにいたんだ。で、僕のギター聴いてくれてた。それからね、知ってる曲だったんだろうね、いきなり歌いだしたんだ。びっくりしたよ」
 誰かと良く似てるよね。僕は笑う。好きにならずにいられない。僕がスペシャルな二人と出会ったときの曲は、両方ともこれだった。賢い人たちは言う。愚か者達だけが慌てて恋におちていく。でも、僕は、君を好きにならずにいられない。君の歌を、好きにならずにはいられないんだ。


「ねえ、歌うの、好き?」


 僕は彼女を見て、言った。彼女はゆっくりと表情を崩していって、最後には泣き笑いみたいな顔になって、

「すき、です」

 と言った。

「でも、あたしの歌なんて、ぜんぶ、ニセモノで」
「ニセモノ?」
「歌っても、ママみたいにうまく歌えなくて、ママの子供だからって期待してる人の顔がどんどん冷めていって、」
「誰かに、言われたの?」
「あたしを生まなかったら、ママはアイドル続けてて、もっと、もっと……」
 彼女の声は震えていて、僕の知っている大きな目はぽろぽろと涙をこぼしていた。目の前で女の子に泣かれた経験のない僕には、気の聞いた言葉の一つも浮かばなかった。僕は息を吐いて、ただ彼女の涙が止まるのを待った。
「僕が、十五歳の少年だったら」
「え?」
「きっと、君に恋してた。君と、君の歌に恋してた」
「……せんせ」
「でも僕はもう十五歳の少年じゃないから、君に恋をすることはできない。だけど、十五歳の僕には言えなかったことが言えるかもしれない」
 恐る恐る、僕は彼女に触れた。言葉だけじゃ届かないような気がした。僕の全部で、彼女に伝えなければいけないと思った。だから、彼女に触れてみた。彼女の頬はとても滑らかで、涙も温かかった。僕が触れたくらいじゃ汚れも壊れもしない強さがあることを、僕はもう知っていた。
「問題です」
「え?」
「さっきの拍手は、誰に贈られたものでしょう?」
「せ、せんせの演奏?」
「残念、違います。僕の演奏や歌じゃ、人を引き付けられない。それは君だって知ってるはずだ」
「で、でも」
「誰に贈られたものでしょう?」
 僕は彼女の目を見た。言うんだ、と思った。ちゃんと言葉にして言うんだ、と彼女の目に伝えた。言葉にして、めいっぱいアピールしてやるんだ。
「…たしの、…た……?」
「聞こえない」
「…たしの、…た」
「もっと大きな声で。歌うみたいに」


「――あたしの、うた、です!」


 彼女は顔を上げた。その目の中に、光があった。空に浮かぶ星みたいに、みんなが見上げて、そして愛さずにはいられない、そんな光だった。
 僕は笑って、彼女の頬から手を離した。涙の跡の残る顔で、彼女は僕を見ていた。
 そんな彼女に、僕は大きく頷いてみせる。
「ちゃんと、言えた」
 彼女は頷く。
「ほら、君の居場所はなくならない」
 頷く。
「大丈夫」またぽろぽろと涙を流し始めた彼女の目を見ながら、僕は言った。「君の歌は、ちゃんと、届くよ」






 //



 ねえ。
 僕は、君からもらったたくさんのものを、ちゃんと返せただろうか?



 //






 ……どうして、って言われても、あたしにはこうなんだよ! ってばしっと返してあげることはできないです。だって、どこが自分の居場所かとかなんて、そんなの、誰かに決めてもらうことじゃないから。自分でちゃんと、決めなきゃいけないことだから。

 あたしは、日高舞の、子供です。

 いつもママと比較されて、なにやってもママのほうが上手にできて、あたしには何にもないんだって思ってました。全部ママのもので、あたしのためのものなんてこの世界に一つだって存在しないんだって、諦めてました。
 でも、違うんだって、教えてくれた人がいました。ちょっと冴えない感じのギターを弾く人だったんですけど、その人が作った歌詞の中にこういうのがありました。今でも憶えてます。


 目を閉じて 歌って
 そしたら何かが変わる
 たったひとつの歌声を 僕たちは聞き取れる
 耳が痛くなるような静寂の中でも
 どんな雑踏の中からだって
 君の声は 誰かに届く


 あたしの声があなたに届くのかは、わかりません。でも、あたしじゃなくても、ほかの誰かでも、きっと、あなたのところに届きます。誰かの声が、きっと、あなたのところに届きます。そんなことを信じてます。信じたいと、思ってます。
 あたしが、そうだったから。

 ……うーん、ごめんなさい、言葉じゃやっぱりうまく伝えられないですね。

 その、歌ってもいいですか?
 それが一番あたしらしいかなって。
 え、げ、げすと?

 ――は、はるかさん!?

 歌と聞いて、って、え、え?
 なに?
 いったい何なのー!?


 //


「……せんせ、笑いすぎ」
「いやごめん、でも、うん、お腹痛い」
「ぶー」
「ところでさ」
「はい」
「冴えない感じのギター弾く人っていったい誰のこと?」
「誰でしょうねー?」
「……さっぱりわからないなぁ」


 //


 な、なんだかよくわかんないですけど、歌います!
 なんとサプライズゲスト、私の事務所の先輩で天海春香さん。サプライズゲストのはずだったけど飛び出してきちゃったそうです。あ、笑ってます。すごく可愛いんですけど、最近それに誤魔化されちゃいけないことを学びました!
(そんなこと教えたの誰ー!?)
 ギターは春香さん、歌はあたし。上手く言葉にできなかったこと全部詰めて、歌います。お便りをくださった名無しさん、聞いてください。
 タイトルは――


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「これ、せんせに渡したくて」
 そういって彼女が僕にくれたのは、一枚のCDだった。トラックダウンの前のアルバム用の曲で発売前だからレアですよ、と彼女は言って、そりゃ出回ってないんだからレアだろうなぁ、と僕は思った。
「聴いてもらえると嬉しいなって」
 彼女は笑う。

「一番最初に、せんせに聴いてもらいたくって」

「うん」僕は頷いた。「聞くよ。ちゃんと聞く」
 僕はその無地のCDのジャケットを見ながら言う。
「何回もきいて、そして、いつか僕は、このCDを誰かにあげちゃうかもしれない」
「いつか、ですね」
「うん、いつか。僕の冴えないギターをどうしようもなく真剣に聞いちゃうような、おまけに気がついたら自然と歌い出しちゃうような、そんな子に出会ったら」
「せんせ、って呼んで懐いちゃうような、そんな女の子がやってきたら」
 僕たちは同時にくすくすと笑う。そうやって笑えることを、嬉しく思う。
「あの」と声をかけられて、僕は顔を上げた。少し離れたところに学生っぽいカップルがいて、僕と、ずっと僕の相棒でいてくれてるギブソンを見て、「今日はもう歌わないんですか?」と尋ねてきた。
「歌いますよ!」と言ったのは、僕の隣にいる帽子を被った女の子だった。「ちょっと休憩してましたけど、また歌います。よかったら聞いていってくださいね!」
「ちょ、ちょっと……」
「もう終わりですか、せんせ?」
 出会ったときと同じように彼女は言って、僕はひとつ咳払いをして、空を見上げた。夜空には、完全な月が浮かんでいた。欠けたり満ちたりして、ほんの僅かな時間、完全な形になる月。
「ひょっとして、歌う気?」
「いけないですか?」
「そりゃあ……」いけないでしょう、と言いかけて、僕は少し考え込んでしまった。
 まあ、
 いいのかもしれない。
 いろんなものが複雑に絡み合って、解けない結び目だらけみたいに見えるけれど、それを外すためにはやっぱり、シンプルなのが一番いいのかもしれないじゃないか。
「それじゃあ」
 僕がギブソンのネックに手を添えながら言って、彼女はぴょんと立ち上がる。
「歌います!」

 僕たちの声は、同時だった。




「タイトルは――」




 泣きたいときに泣いちゃえばいいし、楽しければ笑えばいい。
 歌いたいときは、歌えばいい。
 歌が好き。
 だから、歌う。
 うん、それだけが、僕たちの――




“マジックナンバー”




(closed.)
 
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